多読だけに終わらない、グレイデッド・リーダーズの様々な使い道
By Thomas Robb
「グレイデッド・リーダーズといえば多読」―と思う方が多いと思います。 確かに多読は、英語学習者の強い味方であるグレイデッド・リーダーズの主要な使い道の一つですが、実は他にも本当にたくさんの活用方法があるのです。
多読とは?
多読は、非英語圏で暮らす学習者が総合的な英語力を向上するためにはこれ以上のものはないと言っていいほど、素晴らしい学習法です。「多(く)読(む)」という名称からは意外に感じるかもしれませんが、多読とは単にリーディング力を伸ばす方法のみに留まりません。英文をたくさん読む生徒はリスニング力が大きく伸びることもあるなど、全技能において、ある程度の上達が起こることがわかっています。
多読をすると生徒の語彙に対する理解が進むことは確かですが、多読の強みは新しい語彙が得られることよりも、もともと知っている語彙が使われる文脈にたくさん触れられることにあります。このようにして同じ単語を様々な文脈で繰り返し目にすることで、その単語が実際にどのように文の中で使われるのかという「語感」を育むことができるのです。
文法についても同じことが言えます。難しい構文を学ぶよりも、多読ではどのように基本の文法が使われているか、また使われていないか、について知識を深めることができます。
グレイデッド・リーダーズの使い道
グレイデッド・リーダーズの使い道は色々です。もちろん、一番よくあるやり方は各自が単独で読むことです。他の生徒にとっては興味がないかもしれないけれど自分は読みたい、という本を選ぶことができます。こういう形での読書は、教師の監督が必要なく、また、通常の授業時間内で割ける時間よりもずっと時間がかかるため、普通は授業の外で行われます。
クラス用セット
「クラス用セット」といえば主に、クラスの全員が同じ物語を読めるように、同じ本を何冊も揃えていることを指します。生徒全員に同じ本を同時に読ませることには、それはそれで様々な利点があります。家に持ち帰って量を読ませることもできますし、授業中であれば予め準備しておいたアクティビティに沿って、文中に登場する文法事項や語彙の用例を解説する精読を行ったり、物語の文学的な面を紐解いたりもできます。ピアソンの新刊のMarvelリーダーなどに用意されているアクティビティを利用してもいいでしょう。さらに、読了後用アクティビティを生徒自身に選ばせ、クラス全体に向けて発表してもらうこともできます。
Pearson English Readersでの「EasyStarts」など、同じ難易度の本を揃えて「クラス用セット」を作るのも良いでしょう。この場合は、一人一人が違う本を選んで授業時間内に読み切る、という使い方ができます。
読書サークル
クラスを4〜6人の少人数グループに分けて、課題図書を与える、または自分たちで選ばせます。その中で「リーダー」「語彙マスター」「登場人物マスター」「設問作成担当」「報告担当」「イラストへのコメント担当」などの役割分担をし、各自単独で準備をします。次の授業では調べてきたことをグループで話し合います。続いて、各グループの報告担当者がクラス全体に向けて短いプレゼンを行います。
「メリーゴーランド」式プレゼンテーション
私の授業で大変盛り上がったことがあるのが、「メリーゴーランド」式で生徒に好きな本について短いプレゼンをしてもらうアクティビティです。まず、生徒を4〜5人のグループに分け、各グループで1名が自分の本の主なあらすじ、好きな登場人物、その本を読んで新たに学んだことは何かをグループ内で発表します。3分ほど経ったら各プレゼンターは一斉に1つ隣のグループにずれる形で移動し、同じスピーチを繰り返します。こうして、読んだ内容を基にしてスピーキングを練習する機会を増やすことができます。終わったらプレゼンターは元いたグループに戻り、2人目と交代してもいいでしょう。もしくはそのまま3つ目・4つ目のグループに移動してプレゼンを続けてもいいでしょう。ただし、全員が同じようにプレゼンをして回れるような時間配分は必要です。生徒たちに「面白かったか」「よく準備されていたか」「手元を見ずに話していたか」などの項目を記載した評価シートに記入させ、授業の終わりに提出させてもいいでしょう。生徒全員がスマホを持っているのであれば、教師側で決めておいた評価項目に沿って一人ひとりが他の生徒のプレゼンに点数をつけたりコメントを書いたりすることができるアプリ「peereval.mobi」が使えるかもしれません。
生徒の読書状況を把握する
読んだ本の冊数やページ数、単語数など、生徒の進捗を表にして記録することで、自分自身に挑戦を課す形でも、クラスメイトと競う形でも、より多くを達成するように促すことができます。壁に表を貼るといったシンプルな方法から、https://tinyurl.com/er-recordsheetからGoogleのスプレッドシートをダウンロードして、生徒が自分で記入できる、専用のオンラインの進捗追跡システムを作成する方法もあります。
究極のツールとも言えるのがMReaderです。読んだ本に関する簡単なクイズに答えることで、自分のページにその本の表紙を追加し、これまでに読んだ本のコレクションを作成できる無料リソースです。詳しくは上記ウェブサイトで直接ご覧いただけます。
多読についてもっと知りたい方へ
Extensive Reading Foundationのウェブサイトは、グレイデッド・リーダーや多読の実践方法に加え、様々なトピックについての情報満載のリーディング専門ポータルサイトです。
トーマス・ロブ氏について
JALTで2代目会長を務めた後、1990年まで事務局長を務め、様々な学会で活動。主にテクノロジーを利用した言語学習に関心を持っており、この記事に登場したMReaderとPeerevalを設計。2017年には「Milneイノベーション・アワード」を受賞。京都産業大学外国語学部教授職を退いた今は、国際多読教育学会での理事長職と、TEST-EJ(英語指導者向けのウェブ・ジャーナル)の編集者を兼任している。
