「Big」な質問から始めよう
By Jeanne Perrett
Go」という言葉から、どうやって生徒に興味を持たせられるだろうか —
新しいトピックや課題を紹介しようというとき、どこの国の先生方も、そんな自問自答をすることでしょう。本記事のタイトルからお気づきかもしれませんが、今回のテーマは「質問のしかた」です。
何かをそのまま述べるだけよりも、質問にすることでさらに会話や刺激が生まれるもの、そう普段の人間関係から実感している方もいるかもしれません。では、もう少し突き詰めて考えてみましょう。次の2つの話し方を聞いた生徒は以下のどの返答をするでしょうか?
A) 今週のテーマは、「宇宙開発」です。
B) 宇宙を開発することは大事だと思いますか?
生徒の反応:
- 賛成意見または反対意見を表明できる:A or B
- 知識に基づき、トピックについて会話を始められる:A or B
- 自分の意見には価値があると感じる:A or B
- トピックについて、自分も意見を言えると思う:A or B
- このトピックは先生が進めるのだろうと思う:A or B
- 質問文のほうが断定文よりも生徒を引きつけることは明らかですね。生徒たちは想像力を働かせ、反応も良くなり、深く考えるようになります。
ただし、どんな質問文でもいいというわけではありません。生徒を考えさせ、会話につながる質問もありますが、単純なイエスかノーで終わってしまい、後が続かない質問もあります。
そこでおすすめなのが、「Big」な問題についての「Big」な質問です。このタイプの質問は、会話や学びを続かせます。
そもそも、「Big」な質問とは?
「Bigな質問」には正解がなく、アイデアや意見が湧くきっかけになります。また、授業でこれからこのトピックを扱い、新しい情報を学び、そして知識をシェアし合うのだ、という認識を生徒に与えます。
では次の質問の中で、どれが「Bigな質問」だと思いますか? 生徒が最も関心を持ちそうな質問はどれだと思いますか?
- 家では電気を使っている?
- 電気はどこから来ているの?
- 「ヒーロー」の条件とは?
- あなたの好きなスーパーヒーローのキャラクターは?
- どうして学校に行くの?
- 学校は好き?
- 地元は田舎? それとも都会?
- どうして人々は都市に住むの?
「Bigな質問」を使ってトピックを紹介した後は?
「Bigな質問」をした後は、生徒たちがもっと積極的になり、進んで発言し、ただし場を独占しない程度に見せ場を持つようにしなければなりません。ですから、生徒に様々な形で答える機会を作ることをおすすめします。例えば、こんな指示ができます:
- メモを取る
- 絵を描く
- グループや二人組で話し合う
- 一人ずつ、クラス全員の前で話す
他にもおすすめなのが、掲示板の利用です。「Bigな質問」を掲示しておき、生徒たちに、自分の描いた絵、メモやアイデアを加えてもらう、という使い方ができます。「Bigな質問」には完全な、簡単な答えは存在しないため、生徒には途中でアイデアや意見を修正しても、新しく足してもいいのだと念を押しておきましょう。
よく考え、思いつくままに意見を変えたり、アイデアを試したり、議論の題材を提案したりしてもいいのだという意識は、思考力の成長に欠かせません。
最初からすべてうまくいく必要はない、と生徒に伝えることも重要です。思い違いをして発言した後に、考え直してもいいのです。「Bigな質問」も、工作や、共同制作作品のようなものだと考えてみましょう。小さなアイデアであれ大きなアイデアであれ、好きなように表現させてあげましょう。
思考や知識を培うには?
「Bigな質問」を答えやすくするには、刺激や情報、事実やアイデアといった材料を使って、生徒が知識を広め、意識を高める補助をしてあげる必要があります。
方法はたくさんあります。例えば、先に紹介した「Bigな質問」のうち「電気はどこから来ているの?」であれば、太陽や、風力・水力発電についての話をしてもいいでしょう。化石燃料の発掘についてや、化石燃料はなぜ再生が難しいのかについて、でもいいかもしれません。
そうすると、自分が、どんな資源から生まれた電力をどう使っているのか、環境への意識を高めることはできるのか、どうしたら可能になるのか、など考えるきっかけになります。
こういうアクティビティは、段階を踏んで進めることが大事です。「太陽」をサブトピックに選んだら、こんなふうに話題を掘り下げてみてもいいでしょう:
- 太陽とは何か? 太陽は何からできているの?
- 太陽が地球にもたらしているものとは?
- 太陽の光はどのように利用されているの?
- 太陽エネルギーは、生活や産業でどんなふうに活用されているの?太陽エネルギーは再生可能なの?再生できる自然エネルギー源には他に何があるの?
- 再生可能エネルギーを使うといい・必要なのはなぜ?
年齢の低い生徒向けの「Bigな質問」についても考えてみましょう。例えば、「どうして学校に行くの?」なら、こういう掘り下げ方をしてもいいでしょう:
- 学校ではどんな授業があるの?
- 好きな科目は何?
- どうして算数を習うの?
- 学校以外で算数を使うことはある? いつ、どこで、どうやって使うの?
- 他の科目は、学校の外でどんな風に使えるの?
- 勉強以外には、学校でどんなことをしているの?
- クラスの子と一緒にいるのは好き? 一人でいたいこともある?
- 一日中家にいても、学校でしていることを全部できると思う?
- この先学校でやってみたいことは何?
時間をかけてゆっくりと
「Bigな質問」は、リーディング、ライティング、スピーキングなどの技能の練習にもなりますが、「Bigな質問」を使って新しい単語や文法を教えることもできます。ですから、あせらずゆっくりと進めましょう。量は少なめでも、時間をかけて生徒が学習内容をすべて吸収する時間を与えるほうが得策です。教科書を使うのは結構ですが、進度を気にする必要はありません。どんな話題であっても、さっさと通り過ぎてしまうよりも深く掘り下げて学ぶほうが満足感を得られるものです。何よりも、そうすることで楽しく、記憶に残る授業になるのですから。
About Jeanne Perret
ジーン・ペレット先生はサセックス大学英文科卒、1981年からギリシャ在住。35年以上にわたり教師、校長、発行人、ライターとして言語教育業界に携わり、著者としても著名な幼児や児童向けのEFLシリーズをいくつも手がける。児童英語コース『Now I Know!』シリーズの共著者でもある。世界中の英語教師を教え、英語教育カンファレンスでも多数講演。4人の子を育て、今では5人の孫を持つという実践的な経験も生かしている。
